果鈴版 大石兵六物語H

キツネたちにいいように遊ばれた兵六は
「おのれ!妖怪キツネめが、どんな手段を使ってでも退治してくれるわ!」と眼をカッと見開きキツネを探し回ると、見慣れない地蔵を二体見つけました。
「どうせこれもキツネの化けたやつに違いない。もう騙されぬぞ!」と自慢の波の平をうしろに隠し、花を一枝供える真似をして近寄り、いきなりエイっと飛びかかって押さえつけました。
「暴逆無道の悪党キツネどもめ。人間の皮をかぶった古キツネの分際で!!」
「金銀を奪い取るばかりか人をだましたり坊主にしたりと悪さばかりしおって!」
「その上昨夜からわしを苦しめ、このような見苦しい坊主頭にしたことは、絶対許さぬ」
「恨みは百倍にしてくれる。貴様たちの腹わたを切り破り、肉を食ってもまだ足らぬ」
「この大石兵六を甘く見る出ない。思い知ったか妖怪キツネ」
そう言いながら兵六は、捕まえたキツネを二匹並べて急所をひと突きにしました
あっと言う間に突いたので「クワン」とも鳴かずにキツネは死んでしまいました。
この二匹のキツネは長老キツネのコン・セリザワと局長キツネのコンドウキツネでした。
長老と局長を亡くしたキツネどもは威勢を失い人里に近寄らなくなりました。
人々は安心して暮らしたといいます、これもみな兵六のキツネ退治のおかげでした。

さてさて、退治したキツネを担いだ兵六は、昨夜の難儀は夢だったかのように、
「このキツネを鍋汁にして食ったらさぞうまいだろうな」などと、のどもと過ぎれば熱さを忘れる。
人間とはほんとどうしようもない愚かな生き物ですね・・・
兵六は上機嫌で歌を詠み始めました。
『明日もまたキツネ狩りして帰らめや おなじ尻尾を束ね緒にして』

さつま 


home