書の五体について

「心」という字を例にとってみました。(ちなみに、僕が書きました(笑))
左から「篆書(てんしょ)」「隷書(れいしょ)」「楷書(かいしょ)」「行書(ぎょうしょ)」「草書(そうしょ)」の順です。
ただし、成立時期については「楷書」がもっとも遅いと言われています。

五体という分類には異説もありますが、書の世界では割と一般的だと思われます。それぞれの書体について簡単にまとめてみましょう。各書体の細かい点などは、別の機会にしたいと思います。

篆書
五体の中ではもっとも古い書体です。
小国が乱立していた時代には、各国で異なる文字を使っていました。
秦の始皇帝により、天下が統一されると、度量衡など単位の統一とともに、文字も統一されるようになりました。この統一された文字を「小篆(しょうてん)」、それ以前の文字を「大篆(だいてん)」といいます。
実体をあらわす文字は絵文字から発展したものが多いようです。抽象的な概念をあらわす文字は、多くの人がわかりやすいように記号化されていました。例えば、漢数字の一、二、三。これはとってもわかりやすいですよね。実は「四」も横に4本の線を引くだけでした。「上」は横線の上に点か縦線を引いていました。当然「下」は横線の下に点か縦線です。
この書体は現在でも印鑑などに残っていますね。

隷書
「隷書」というネーミングには、奴隷階級の人が書き始めた、篆書に隷属する文字だから、など諸説があります。
いずれにせよ、篆書を簡略化して書いたものが「隷書」です。簡略化するだけではなく、徐々に装飾性をもたせて発展していきました。
「隷書」の全盛期は、漢の時代です。まさに「漢字」ですね。
現在でも看板などによく使われています。「心」からはわかりにくいですが、ゴシック体も隷書の構築性と近いものがあります。
僕が一番得意としているのはこの書体です。

楷書
現在最も一般的な書体ですね。この書体は行書の構築性を高めたとも言われており、もっとも遅く完成した書体です。一番書きやすい書体だと思っている人も多いでしょうが、完成度の高い楷書を書くのは一番難しいかもしれません。
楷書の極則と言われるのは、唐代の欧陽詢(おうようじゅん)が書いた「九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)」です。

行書
隷書や楷書の続け書きです。隷書から発生したものと、楷書から発生したもでは、同じ文字の行書でも筆順が違うことがあります。文部省(現文部科学省)が定めた筆順は行書によるものです。したがって、複数の筆順が存在する文字も多数ありますね。
普段のメモ書きなどは行書になっている場合が多いのではないでしょうか?
最も有名な行書の古典は、東晋の王羲之(おうぎし)が書いた「蘭亭叙(らんていじょ)」でしょう。しかし、真蹟は唐の太宗皇帝と一緒に埋葬されたため、現存していません。

草書
これも行書と同じく、隷書や楷書の早書きです。
俗にいう、ミミズの這ったような字ですね(笑)。
平仮名は草書を更に簡略化したものですので、知らず知らずのうちに草書を書いているとも言えるのかもしれませんね。

おまけ
「福寿」を各書体で書いてみました。2文字とも旧字体を使っています。めでたい言葉なので朱墨で書いてみました。ちょっと下手かもしれません(笑)。

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